朝、起きたらまず神棚へ向かいます。
水を換えて、手を合わせる。
仏壇にも、ごはんを替えて、手を合わせる。
それから、一日が始まります。
職人だった頃も、経営者になった今も、この順番は変わりません。
職人から経営者へ
立場が変わりました。
老舗の四代目として、職人から経営者へ。
菓子をつくる時間は減りました。
帳簿を見る時間が増えました。
現場より、判断の場に立つことが多くなりました。
変わったことは、たくさんあります。
でも、変わらないことがあります。
朝の日課です。
神棚への挨拶。
仏壇への挨拶。
御先祖様への挨拶。
これだけは、何があっても続いています。
経営が苦しい時期も、続けていました。
先代を見送った後も、続けていました。
店舗をなくした日も、翌朝には手を合わせていました。
続けることが、当たり前だったからです。
神棚と仏壇
神棚には、毎朝水を換えます。
仏壇には、ごはんを替えます。
おぼくぜんを整えて、手を合わせる。
この一連の動作が、5分もかかりません。
でも、この5分がなければ、一日の始まりが違います。
手を合わせながら、何を話すかは、その日によって違います。
ただ報告することもあります。
感謝を伝えることもあります。
何も言わず、ただ静かに手を合わせることもあります。
でも、必ず手を合わせます。
それが、一日の始まりです。
神棚と仏壇の前に立つと、背筋が伸びます。
急いでいる朝も、気持ちが重い朝も、その瞬間だけは静かになります。
その静けさが、一日を整えます。
御先祖様との会話
御先祖様に話しかけます。
おかしいと思われるかもしれません。
でも、自然なことだと思っています。
曾祖父がいた。
祖父がいた。
父がいた。
その人たちが積み重ねてきたものの上に、今の私がいる。
挨拶しないわけにはいきません。
今日も続けます、と伝える。
今日もありがとうございます、と伝える。
経営がうまくいかない時は、正直に話します。
「今日は難しい判断がありました」
「どうすればよかったのか、まだわかりません」
答えが返ってくるわけではありません。
でも、話すことで、自分の中が整理されます。
御先祖様への挨拶は、自分への問いかけでもあります。
今日の自分は、恥ずかしくないか。
誠実にやれているか。
その問いを、毎朝繰り返しています。
氏神参拝
できる日は、氏神様へ参拝します。
行けない日は、通りがかりの神社へ。
それも難しい日は、気になる神社仏閣に立ち寄ります。
この習慣は、若い頃からです。
特に誰かに教わったわけではありません。
気づいたら、そうなっていました。
老舗の経営者として、大きな決断をしなければならない時があります。
そういう時は、必ず参拝してから動きます。
手を合わせることで、頭が整理されます。
迷っていたことが、すっきりすることがあります。
答えが降りてくる、という感覚に近いかもしれません。
神社仏閣が好きです。
静けさが好きです。
その空間に身を置くだけで、日常の雑念が薄れます。
それが、経営者としての判断を助けてくれていると思っています。
繰り返すことの意味
なぜ繰り返すのか。
意味を考えたことは、あまりありません。
続けることが当たり前だから、続けている。
良い日も、悪い日も、始まりは同じ。
慌てない。焦らない。
朝の日課がそれを支えています。
清掃ということ
神棚の周りを清掃します。
仏壇の周りも、丁寧に拭きます。
清掃は、整えることです。
外を整えることで、内が整います。
菓子をつくっていた頃、道具を大切にしていました。
鍋を磨いた。型を丁寧に扱った。
その習慣が、今は神棚・仏壇の清掃に繋がっています。
整えることへの敬意は、変わっていません。
経営者になっても、変わらないもの
職人から経営者へ。
変わったことは、たくさんあります。
でも、朝の日課は変わっていません。
神棚へ。仏壇へ。御先祖様へ。
手を合わせて、一日を始める。
それだけのことです。
でも、それだけのことが、続けられている。
続けられているということは、自分の中で大切なものだということです。
意識しなくても、体が動く。
それが、本物の習慣です。
結び|手を合わせる朝に、支えられている
今日も、神棚に水を換えました。
仏壇にごはんを替えました。
御先祖様に手を合わせました。
それから、一日が始まりました。
職人だった頃も、経営者になった今も、変わらない朝です。
老舗の四代目として、華やかな話ばかりではありませんでした。
苦しい時期もありました。
迷った日もありました。
でも、毎朝手を合わせてきた。
その繰り返しが、私を支えてきました。
四代にわたって続いてきた店の背後に、こういう日課があったのかもしれません。
曾祖父も、祖父も、父も、それぞれの朝に手を合わせていたと思います。
言葉にはなっていない。
でも、繋がっている。
同じことを繰り返す。
それだけのことが、百年を支えてきたのかもしれません。
今日も、明日も、続けます。
次回予告|続けることの力|積み重ねだけが、本物になる
毎日続けていると、見えてくるものがあります。
積み重ねだけが、本物になる。
次回は、その話を書きます。
