暖簾は、布切れです
しかし、その重みは計り知れません。
四代、約百年。
その間、何万人のお客様がくぐったことでしょう。
暖簾を守るとは、何を守ることなのか。
四代目を継いでから、その問いと向き合い続けてきました。
暖簾とは何か
暖簾は、店の顔です。
しかし、それだけではありません。
暖簾は、信用の証です。
この暖簾があるから、お客様は安心して入れる。
この暖簾があるから、信じてもらえる。
曾祖父が掲げ、祖父が守り、父が受け継ぎ、私がつないでいる。
その積み重ねが、暖簾の重みです。
四代の重み
私は四代目です。
四番目ということです。
しかし、その重みは四倍ではありません。
もっと重い。
曾祖父が築いた土台。
祖父が守った信用。
父が抱えた葛藤。
すべてを、私が背負っています。
曾祖父が始めたこと
曾祖父は、この商いを始めました。
何もない場所から、一軒の店を作りました。
「三つの柱を持て」
一つが倒れても、他が支える。
その考えが、家業を支えてきました。
曾祖父が始めなければ、今の私はいません。
その事実が、私を正します。
祖父が守ったこと
祖父は、信用を守りました。
戦争があり、困難な時代がありました。
それでも、祖父は店を閉めませんでした。
「一度お世話になったら、25年は忘れちゃいかん」
その姿勢が、信用を守りました。
祖父がいなければ、暖簾は消えていたかもしれません。
父が悩んだこと
父は、時代の変化と向き合いました。
守るべきか、変えるべきか。
「広げるより、崩さないことの方が難しい」
父は答えを出す前に他界しました。
その問いは、今も私の中にあります。
私の選択
四代目を継いだ時、私は28歳でした。
何もわかりませんでした。
ただ一つだけ決めていたことがあります。
「暖簾を守る」
方法はわからない。
それでも守ると決めました。
それが、私の覚悟でした。
暖簾の重みを知った日
ある日、常連のお客様が言いました。
「この暖簾、何年かかっとるん?」
「四代、約百年です」
お客様は、しばらく見つめてから言いました。
「重いな」
その一言が、胸に残りました。
お客様にも、この重みは伝わっていました。
守るとは何か
味か。
技術か。
形か。
長い時間をかけて、わかってきました。
守るべきは、「心」です。
丁寧に作る心。
お客様を大切にする心。
嘘をつかない心。
それを守ることが、暖簾を守ることです。
変えてもいいもの
すべてを守る必要はありません。
包装は変えました。
営業時間も変えました。
宣伝方法も変えました。
しかし、心は変えていません。
変えていいものと、変えてはいけないもの。
その判断が、四代目の仕事です。
暖簾を下ろす覚悟
守ることには、下ろす覚悟も含まれます。
守れないなら、下ろす。
中途半端に続けて信用を失うなら、潔く終わる。
「商いは、辞める覚悟があって初めて続けられる」
続けることが正しいとは限らない。
辞める勇気も、覚悟のうち。
その言葉を、時々思い出します。
次へつなぐ責任
四代目は、途中です。
受け取って、渡す人です。
無理に継がせたいとは思いません。
けれど、もし「継ぎたい」と言ってくれたなら。
その時、暖簾が残っている状態で渡したい。
選択肢を残す。
それが、四代目の責任です。
孤独な覚悟
暖簾を守る覚悟は、孤独です。
最終的に決めるのは、自分です。
楽な道を選べば、暖簾は軽くなる。
重い道を選ぶから、暖簾は重みを保つ。
その重みから、逃げません。
誰のために守るのか
曾祖父のためか。
祖父のためか。
父のためか。
お客様のためか。
未来のためか。
すべてです。
そして、自分のためでもあります。
この記録の意味
この記録も、暖簾を守る方法の一つです。
記録を残す。
想いを残す。
いつか誰かが読んだ時、
「こうして守られてきたのか」と思ってもらえたら、それでいい。
覚悟とは
覚悟とは、一度決めることではありません。
毎日、選び続けることです。
今日も守る。
明日も守る。
迷っても、進む。
揺れても、立つ。
やめません。
それが、四代目の覚悟です。
結び|暖簾は、布切れです。
しかし、その重みは計り知れません。
信用を守ること。
心を守ること。
歴史を守ること。
その重みを背負い、私は今日も暖簾の下に立ちます。
重いからこそ、守る。
守ると決めたから、背負う。
この暖簾が、五代目、六代目へとつながることを願いながら。
次回予告|和菓子職人が大切にしていること|四代目として受け継いだもの
次回は、和菓子職人が本当に大切にしていることについて書きます。
曾祖父、祖父、父から受け継いだもの。
四代目として、いま何を守っているのか。
この百年の商いの中で、変わらなかったものを記録します。
商いにおける覚悟と、暖簾を守る責任について記録しました。

コメント
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