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桜餅とは何か|和菓子屋四代目が語る「道明寺と長命寺」の違いと本物の見分け方

桜餅には「関東風の長命寺」と「関西風の道明寺」という二つの系統があります。
しかし、その違いと“本物の桜餅”の見分け方を正しく理解している人は、決して多くありません。

桜餅を包む葉の香りを嗅ぐと、私は毎年、春の立ち上がりを感じます。

まだ肌寒い朝、職人たちが黙々と蒸籠を開け、湯気の向こうで米の匂いが立ち上る――
あの光景は、今も昔も変わりません。

桜餅は、ただの季節菓子ではありません。
日本人が「春」をどう味わい、どう祝ってきたかが、その一枚の餅に刻まれています。

本稿では、和菓子屋四代目として現場に立ってきた経験から、
桜餅の由来、関東風と関西風の違い、本物の見分け方までをお伝えします。

桜餅の由来|いつから食べられてきたのか

桜餅が生まれたのは江戸時代。

享保年間、向島の長命寺で、桜の落葉を塩漬けにして餅菓子に巻いたのが始まりとされています。

当時の江戸では、花見文化が庶民に広がり始めていました。

「目で春を楽しみ、口で春を味わう」

その発想が、桜餅という菓子を生んだのです。

やがてこの文化は関西へ伝わり、土地の食文化と結びつき、
二つの系統へと枝分かれしていきました。

桜餅の二大系統|長命寺と道明寺の違い

関東風「長命寺桜餅」

小麦粉の薄皮で餡を包む、いわば“焼き皮仕立て”の桜餅です。
滑らかな口当たりと、皮のしっとり感が特徴。

江戸文化らしい、軽やかで粋な仕上がり。
甘さは控えめで、香りを主役に据えます。

関西風「道明寺桜餅」

蒸したもち米(道明寺粉)を使い、粒感を残した餅生地で餡を包みます。
噛むほどに米の甘みが広がり、腹持ちも良い。

農の文化を背景にした、力強い「春の菓子」です。

私の基準|桜餅の良し悪しを分ける三条件

① 桜葉の塩梅

塩が強すぎれば、餡の甘みを殺します。
弱すぎれば、香りが立ちません。

理想は、
最初に葉の香りが立ち、最後にほのかな塩気が余韻として残る状態です。

② 餅生地の水分管理

乾いた桜餅は論外です。

蒸しと寝かせの工程で、内部に水分を閉じ込められるか。
ここに職人の腕がはっきりと出ます。

③ 餡の温度帯

餡は、冷やしすぎても、温かすぎてもいけません。

人肌に近い温度で、舌の上で自然にほどける状態。
これが最良です。

桜餅作りで学んだ失敗|香りを軽視した代償

若い頃の私は、餡の出来ばかりを追い求めていました。

糖度、粒の潰し方、炊き時間――
数値と工程ばかりに目が向いていたのです。

ある年、常連のお客様にこう言われました。

「今年は、春の匂いが弱いね」

原因は、桜葉の仕入れロットを変えたことでした。
香りの薄い葉を使ったことで、全体の印象が崩れていたのです。

桜餅は「味」ではなく「季節」を売る菓子。

この一言で、私の基準は大きく変わりました。

本物の桜餅と量産品の違い

大量生産品は、保存性が最優先です。

その結果、

・香りが弱い
・塩味が単調
・餅生地が硬くなる

こうした傾向が出ます。

本物の桜餅は、包みを開いた瞬間に春の匂いが立ち上がる。

ここが決定的な違いです。

私が基準としている桜餅

向島 長命寺 桜もち

元祖の名に恥じない完成度。
皮、葉、餡の一体感は別格です。
※店頭販売のみ。

京都 鶴屋吉信「京観世」(道明寺系)

米の粒感と餡の調和が非常に美しい。
老舗の中でも製造ロット管理と季節菓子の品質安定性が高く、贈答トラブルが少ないため、基準として選んでいます。

初めて食べたとき、
「道明寺桜餅の理想形はここにある」
そう感じました。

※通販対応あり。

桜餅の購入方法|自宅で味わうには

Amazon
ポイント利用・自宅配送が可能。
京都 鶴屋吉信 京観世

公式オンラインショップ

品質管理が安定しており、贈答用にも安心です。

百貨店和菓子売場(季節限定)

春先は老舗の実演販売が狙い目。
出来立てに近い状態で購入できます。

※長命寺系は基本的に店頭販売のみ
※桜餅は季節限定(2月〜4月頃)

よくある質問

Q. 桜葉は食べるべき?
A. 好みですが、本来は香り付けが目的です。塩が強い場合は外して構いません。

Q. 保存方法は?
A. 常温で当日中が理想です。冷蔵保存は餅が硬化します。

Q. 冷凍は可能?
A. 可能ですが香りは大きく落ちます。おすすめしません。

まとめ|桜餅は「日本人の季節感」

桜餅は、単なる菓子ではありません。

春を待ち、
春を祝い、
春を惜しむ。

そのすべてが、一枚の桜葉に込められています。

商いも同じです。

流行よりも、積み重ね。
派手さよりも、継続。

それが、暖簾を守るということです。

次回は、柏餅と端午の節句について書く予定です。
また、お読みいただければ幸いです。

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